2011年10月30日日曜日

スペイン旅行:Martin Berasategui (レストラン)

食いしんぼうのバスク旅行2日目のランチはMartin Berasategui。サンセバスティアンのバスターミナルからタクシーで10分(16ユーロ)の閑静な住宅街の一番奥まったところにあります。マルティン・ベラサテギは現在51歳。13歳のころから家業であるレストランの手伝いを始め、25歳でミシュランの1つ星を獲得した長年のキャリアを持つスペインの料理界を牽引する巨匠です。郷土をこよなく愛していることで知られています。またスペインで有名なシェフの父親的存在なのだそうです。











店内は窓が大きくてとても明るい設計になっています。自分たちだけのために用意されたかのような美しいバスクの自然を目の前にしてお食事を楽しむことができます。各テーブルには胡蝶蘭の鉢植え。1時の予約でしたが、この時間に来ていたのはお隣の席のアメリカ人グループのみ。
私たちがメニューを選んでいるとお隣のテーブルから美味しそうなイカ墨の香りが!!期待が高まります。
メニューはアラカルトとテースティングがありましたが、私たちは少しずつお勧めを頂けるテースティングのコースにすることにしました。

まずは1995年の作品。スモークしたうなぎとフォアグラのミルフィーユ。うなぎそのものに若干臭みが残っていましたが、フォアグラや青リンゴと一緒に頂くと不思議とその臭みが和らぎます。
1995 mille-feuille of smoked eel, foie-gras,
spring onions and green apple
 パンはこんなに大きなものが!もちもちです。
次は海藻といくらの乗ったサーモンのタルタルときゅうりをはじめとしたお野菜のソース。お上品です。
2011 savage salmon and seaweed with liquid of cucumber
and spring onion with red fruits and radish
 こちらのカトラリーももちろんオリジナル。

イカのスープ。先程隣のテーブルから匂いが漂っていたものです。まずはラビオラと小さなイカ(ホタルイカ?)が乗せられたお皿が運ばれてきます。

そこに熱々のスープがかけられます。 ふわっとイカ墨の香りがして食欲がそそられます。イカ墨ボールを一口で食べると中からイカ墨のジュースがたっぷり。とても手がかかっています。

2001 squid soup, creamy squid ink ravioli
served with squid crouton


次は生牡蠣。ココナッツミルクやこぶみかんの葉が入っておりどこか懐かしいタイ風。牡蠣の甘さとココナッツミルクの甘さがすばらしい具合に調和しており感激の一皿。

2011 oyster with cucumber, sour fruit
kafir and coconut
フェンネルを様々な調理方法で楽しませてくれる一品。底には米粒大に刻まれたフェンネルの”リゾット”が敷かれておりその上に新鮮なフェンネル、まわりはマルティンが得意とするところのフェンネルを乳化させた泡で飾られています。食感が異なる楽しい作品。お味も優しく美味しかったです。
2011 little pearls of raw fennel, risotto and emulsion
次のお皿は日本人的には温泉卵料理。上には動物性脂肪のカルパッチョが乗せられています。これはこれで美味しかったのですが、私にはどうもベーコンエッグのイメージと重なるものがあり過ぎて感動は生まれませんでした。でも他の日本人には人気のメニューのようです。

2011 "corrotxategi" egg resting in a liquid salad of
red tubers dewlap carppaccio
少し濃厚なお料理の後は再びさっぱりとしたお料理です。シーフードのおだしを感じる上品なサラダ。大変私好みのお味でした!

2011 warm vegetable hearts salad
withseafood, cream of lettuce
and iodized juice














次に出てきたのはスフレのようなお皿。これにシーフードのスープをかけて頂きます。潮の香りが豊かな一品です。日本人からしてみるとこれは海藻入り茶碗蒸し。

2011 curdled of seaweeds with
a translucent consomme
of carabineer















お魚はレッドマレット。鱗もパリパリにして食べられるように調理されています。ふんわりとごまとわかめの香りが漂ってどこか和風の味わいです。美味しい一品でした!生のアーモンドのペーストが添えられています。

2011 roasted red mullet crystals of
edible scales tail and marine salad with
sesame and nuts














お肉は牛のサーロインでした。うさぎのチョイスもありましたが私はビーフに。こちらは出された時のしし唐の香りがすばらしい一品。お肉の焼き加減も最高で脂ののったお肉の持ち味を楽しむことが出来ました。チーズボンボンは口に含むとチーズの液体が飛び出してきます。作るのは本当に大変だったと思うのですが、お肉にマッチするかと言うとそれは疑問を呈さざるを得ません。・・・ということで私は別々に美味しく頂きました。この濃厚なお肉にはトマトサルサなどの方が良かったかもと思うのは私だけでしょうか。

2011 grilled sirloin "luismi" over a bed of
swiss chard chlorophyll and cheese bonbon

デザート一品目はさっぱりした冷たいデザート。ライムのシャーベットにバジルのエッセンスがかけられます。こちらも香り高き一品。シナモンの小さな小さなビスケットやいんげんなどの異なった食感が一層この作品を幅広く面白いものにしてくれている気がしました。
2011 cold essence of basil with lime sherbet,
juniper ice shaving and raw almond
アカシアのはちみつとチョコレートのデザート。添えられているアイスクリームはアイリッシュコーヒー風味です。濃厚なお味。
2010 chocolate and acacia honey with
unsweetened irish coffee

 食後に頼んだハーブティー(7ユーロもする驚き価格!!)は鉄瓶を使って楽しい演出(でもバーベナティーはあまりにも苦くて美味しくなかったです・・・。名誉のために追記するとエスプレッソは昨日のムガリッツのものよりも美味しかったとのこと。)。カップの形も変わっています。











テラスからの眺めは牧歌的。心が癒されます。

最後にマルティンのお客様サービスの時間がありました。本当ににこやかで気さくな方。各テーブルで嫌な顔一つせずサインをしていました。



私たちも頂いてしまいました。マルティンのサイン。家宝にします。




最初から最後まで心地よい気分でお食事を頂くことが出来、大満足のランチでした!ムガリッツは言うならば食の驚きと食のエンターテイメントを楽しむ好奇心旺盛な方向け(お客様も皆さまとてもカジュアルな服装で来ていました)、マルティン・ベラサテギは最高の食材(特に海の幸)を特別な空間で雰囲気ごと楽しむ方向けな気がしました。
マルティンの特徴をもう少し挙げるならば緑が大好きということ。ほとんどのお皿はなぜか緑色がアクセントカラーになっています。それからもう一つは香りで楽しませてくれるということ。お皿が運ばれて来た時にまずそのお皿の美しいプレゼンテーションを目で楽しみ、立ちこめる素材の香りがさらに脳を刺激してくれます。食感にも沢山工夫がされており、ムガリッツ以上に5感で楽しむことが出来ました。マルティンのサービス精神にも大変感銘を受けました。
グラシアス、マルティン(すっかりお友達気分)。最高の思い出になりました。また来ます!


2011年10月29日土曜日

スペイン旅行:バル巡り1

ムガリッツでの昼食が終わったのは17時!でもせっかくサンセバスティアンにやってきたのだからバル巡りも楽しまねば、ということで若干重いお腹を抱えつつ散歩を兼ねて旧市街までやってきました。

夜の大聖堂

夜の市庁舎

賑わいを見せる旧市街のメインストリート
サンタ・マリア教会











今回入ってみたのは大人気のバル、Goiz-Argi 。



お店の中も外も活気であふれています。お店に入るとカウンターいっぱいに美味しそうなピンチョスが並んでいます。カウンターの中にいる店員の方と目が合ったらそれが勝負時。注文のタイミングを逸すると次々とお客さんが来るので永遠に待つことになります。














やはりここは温かいピンチョスを、ということで注文が殺到していた海老の串焼き、チャングーロ蟹の味噌、マッシュルームのイベリコハム巻きを注文しました。フランスと近いだけあって、フランスパンが添えられています。



出来たて熱々のピンチョスはどれもとても美味しかったです。
でも本日はここでギブアップ!残念。ピンチョス1品2ユーロ也。

スペイン旅行:Mugaritz (レストラン)

ついにやってきました!あこがれの地、スペインバスク地方。3日間の食い倒れ旅行記の始まり始まり~~。
初日のランチはイギリスのグルメ誌が選ぶ2011年世界のレストラン・ベスト50で3位に輝いたレストランMugaritz。ミシュランでも2つ星を獲得しています。このレストランは賛否両論評価が大きく分かれていたのですが、せっかくの機会なので、ということでお邪魔することにしました。
場所はサンセバスチャンのバスターミナルからタクシーで12分(18ユーロ)のところにあります。レストランのまわりは羊や牛が放牧されていたりしてとてものどかな雰囲気です。


1時からの予約でしたが、私たちがなんと最初の客です。早速キッチンに案内して頂きました。キッチンの入り口の壁にいきなり日本語が・・・。「友情の木の枝、ありがとう」と書かれています。これは2010年2月に火災に会った際、日本のムガリッツファンの皆さんが沢山の支援をしてくれた、その気持ちを記憶しておくために刻まれたものだとか。著名な方の名前も並んでいます。

キッチンは私のイメージしていたものよりもずっとこじんまりしていました。修業中という日本人のシェフのお一人(お魚担当)が、各セクションの説明してくれました。毎日のメニューはシェフがその日に仕入れたものによって決めるのだそうです。仕入れの数にはもちろん限りがあるので、各テーブル出てくるものが異なるとか。キッチンは地下にもあって、地下のキッチンは主に下ごしらえ用で、室温が15度に保たれているのだとか。下で働くスタッフは寒いのでジャケットを着て仕事をしていると言っていました。











そしてレストランのモットー(?!)も刻まれています。自然・都会、平穏・混乱、簡素・素朴、精密・即興、不測・伝統、遅さ・速さ。

レストランは木の雰囲気が落ち着いたシンプルな空間です。
 テーブルに着くと、カードが渡されます。
どんな挑戦が待っているやら。期待が高まってきます。
日本語のフレーズを沢山知っているウエイターの方曰く、最初の5品は手で食べる前菜なのだとか。
まずは、クリスタルのシートにのせられた胡椒のプラリネとクモ蟹のムース。パリパリのクリスタルシートはでんぷんとお砂糖で作られたのだそう。おせんべいと蟹味噌でしょうか。

starch and sugar crystal spotted with pepper praline and corals
プレラリアというマメ科クズ属のフォッカッチャ。タイとミャンマーの国境近くの原生林に自生する珍しい植物らしいのですが、その有難さは残念ながらよく分からず。普通にパリパリとした歯ごたえで美味しかったのです。
grilled pueraria focaccia

うやうやしい紙に包まれて出てきたのは何とりんご。紙を空けるとふわっとカルダモンの香りが漂います。普通のりんごなのですが、そうとは思えない美味しさ。実験大好きのムガリッツのことですから、これ一品にもここまで完成するのには相当の工程があったのではないかと思われます。
fragrant fruit in a paper wrap




このおせんべい、味は日本人には昔懐かしいえびせんべい。でも口に含むとすぐに溶けてしまいます。不思議です。2切れだけ添えられたパプリカ(たぶん)には沢山のこしょうとスパイスがまぶされていますが、一緒に食べても美味。今メニューを改めて見て初めて理解したのですが、こちらのおせんべい、実はソースだったようです。常識を覆すとはこういうことですね。

crunchy sauce with peppers












テーブルには実はこんなお皿が飾られています。なるほど。

手で食べるメニューの最後は「食べられる石」。見た目も触った感じも石そのもの。でも中身はじゃがいもなのです。甘くてしっとりしていてうまみが凝縮された美味しいじゃがいもでした。下に敷かれている砂ももちろん食べることが出来ます。にんにくのマヨネーズが添えられていましたが、素材が十分美味しいので付けない方が断然美味しかったです。
edible stones


ここまでの5品はなぜか煽られるようなスピードで出されました。モットー(?!)の一つであるの「速さ」の演出でしょうか?

次は自家製モッツアレラ。ほんのりとスモークした紅茶の香りが付けられていて、シンプルで美味しい一品でした。そして、このガラスは日本製!
home made mozzarella, whey emulsion
infused with smoked black tea


ヘーゼルナッツと豆のシチュー。上にのっているのは何と、貝殻の中の膜を特別な方法で取り出したものだとか。ヘーゼルナッツは昔懐かしいおばあちゃんの似豆風。貝の膜はパリパリとした食感で美味しかったです。

hazelnut and beans stew
カリフラワーのムース。底にはハムのジャムが入っていて、ソースと一緒に食べて下さいとのこと。カリフラワーの食感は良かったのですが、石灰的な味は私にはどうも・・・。
spoons of bechamel and califlower
豚皮のヌードル。ソースは魚介のおだしたっぷりのソースです。最近流行りの魚介だしのラーメンのイメージ(失礼!)でした。コラーゲンたっぷりです!
pork noodleswith "arraitxiki" extract and toasted rice

パンはしっかり小麦粉の味がして美味しかったです。もっと食べたかったのですが、お腹のスペースの関係で2口くらいしか食べることが出来ず本当に残念。


「チーズに見えますが、さて何でしょう?」と言って出された一品。風味はチーズ。食感はゆば。正解はミルクから作ったものなのだそう。発酵させていないのでチーズではないのだとか。海あり山ありのユニークな一皿でした。
curd cheese, in its own rind, mushrooms and
coastal herb

次に出されたのは温かい白パン。これは中華万頭!小さなスプーンには右からオリーブ、くるみ、炒め玉ねぎのペーストが入っています。スプーンによって甘みを感じたり苦味を感じたり(炒め玉ねぎとのマッチングは冬に食べる肉まん味!)。味覚を最大限刺激してくれます。温かい時にはあまり感じなかったのですが、冷めてから頂くとこの白パン、チーズのようにクリーミー。一品で5回くらい美味しい色々な発見のある一皿でした。このパンの大きさには少し改良の余地があるかもしれません。

three spoons of a creamy white bread













牛タンの繊維。パリパリで面白い一品。タイトルも面白いです。

Shhhhhh... cat got your tongue!
こちらは少し理解に苦しんだ一品。もちもちのパンのシチュー。パンの食感は良かったのですが、上に沢山のった蟹には香りもうまみも残っておらずダシがら状態だったのが残念。蟹の食感も今一つ。ピンクジェラニウムの葉の香りが全てを邪魔していたのかもしれません。
silky bread stew, infused with pink geranium leaves
covered with crab meat
 「大根のクリーム煮」と言って出されたのがこちら。ヘイクのさっぱりした身に大根の濃厚ソースがマッチしたシンプルで美味しい一品。和食と言っても良いくらいです。酸味のあるソースにつけても絶品です。そしてこの上なくお上品。日本人のシェフがお魚セクションで頑張っているので余計に美味しく感じます!
portion of hake and milky reduction of stewed turnip sprouts,
citric cream and salt grains
次は鯛。骨とか皮とかヒレとか色々な部位が全部使われているそうです。でもお魚大好きな日本人にとってはお魚の美味しいところはどこもかしこも食べるのは当たり前。上品というよりはかなり庶民的。日本的な味がしました。
textures of coastal fish
 次にオリジナルのフォークとステーキナイフが出され、

シンプルなステーキの登場です。これまで色々工夫されたお料理の数々だったのですが、最後は素材勝負。でも一ひねりあったのは添えられていた牛脂を乳化させたもの。こちらを付けて食べるとお肉の甘さが際立ちます。でも私はやっぱりそのまま食べるのが美味しかったです。そして個人的にはこしょうがあると嬉しかったです。
piece of beef, grilled steak
emulsion and salt crystals













ここで、デザート前のコースはおしまい。ウエーターさんが追加が必要ですか?チーズはどうしますか?と聞いてくれましたが、私たちはもうギブアップ。でも両隣のスペイン人は追加でもう1品ずつ頼んでいました。脅威の胃袋!!!
ここで腹ごなしのため中庭をお散歩。




最初のデザートは見た目も美しい秋のアイスクリーム。濃厚なクリームにくるみの風味がよく調和しています。くるみの殻は本物そっくり。チョコレートで出来ています。


broken walnuts, toasted and salted,
cool milk cream, armagnac jelly
 次はラビオラ。甘い香りと共に運ばれてきます。小龍包のように中に液体が入っているので一口で頂きます。上にはオレンジピールとアーモンドが乗っています。

creamy pasty of brioche













お皿に乗ったドームの形のビスケットはテーブルで割られました。裏にはアイスクリーム貼り付けられていてパリパリと頂きます。子どもに返った気分で楽しみます。
sweet grain biscuit with anis and flowers

 最後のデザートは植木鉢の中に入ったお花。上にはチョコレートで出来た釘がささっています。何を語っているのでしょう。植木鉢の土もチョコレートや種で出来ていて美味しく食べることが出来ました。
nails and flowers



 食後はお庭でコーヒーを楽しみます。


最後まで演出は欠かしません。小さな白い錠剤状の物質の上にお茶をかけておしぼりにしたり・・・。










この小屋には六本木の吟龍から贈られた板が飾られていました。


最後にウェイターさんにインタビューして聞いたところによると、現在サービススタッフは15人。キッチンでは35人が働いているとか。うち日本人は3名。キッチンスタッフの半分は交代制で、世界各地の「ムガリッツで修業をしたい!」というやる気のある人を面接で選んで受け入れているのだとか。このようなスタッフにはムガリッツが宿舎と食事を提供します(・・・と言えば聞こえは良いのですが、はっきり言ってしまうと無給ということのようです・・・。)。年間150ものポストがあるとか。

ムガリッツ、5感をフルに活用しながら食を楽しむことのできるそんな素敵なレストランでした。???と思う作品もありましたが、食材に対するステレオタイプを覆してくれるような経験が出来るのもこのレストランのすばらしさだと思います。スタッフはみな親日家で、サービスも気持ち良かったです。ごちそうさまでした!!